読書メモ 図書館の魔女 挫折なりに

図書館の魔女

文庫版2巻終わりまで読んだ。
難しいとレビューに書いてあったから覚悟していた。こういう風に難しかったんだね。身をもってわかったよ。

レビュー程度の前知識で妄想をしていた。
内気で該博な帽子かぶった黒髪ロン毛魔女が手話を通じて政治、偉い人、身内と戦いギリギリの頭脳戦で互いにショタと恋愛、友情、絆を育む青春ファンタジー小説だと妄想していた。汗ばむ手。2人だけの世界。鳥籠からの脱出。魔女は図書館から解放され自分とショタの道を歩む。そんな感じの。

全然違かった。まず2冊合わせて約500ページ。そのうち300ページ程が社会の教科書みたいに無味な政治小話だった。飛ばした。20ページほど敵の動向を淡々と報告するシーンもあったような。これは、真面目に読んだら、私が爆発する。すっ飛ばしながら読んだ。

次に語り手が謎。ここまで晦渋な言い回しばかり多様されるとお前は誰だ。お前なんでそんな頭いいんだよ。成長したキリヒトがマツリカ様から大量の語彙や詩藻を自家薬籠中に付し成熟してレポートを書いて語っているのかな?とも思ったがマツリカ様側やキリヒト側の盲点っぽいことも書いてあるから違うのかな。「キリヒトは、切なく笑った。こんな顔、見たことがない(意訳)」「キリンはこういった経緯で〜ハルカゼはこういった経緯で〜」全く情景が浮かんでこないほど難解な言い回しばかりを多様して読者の私に挑戦してきたのでこれは伏線なのだと思った。この言い回しはレポートをしている、という結果の元親身に情景が浮かばないのだと。成長したキリヒトはここまで凄くなるから、今のうちに見ておけよ。と。4巻まで読んで見守りたいけどもう疲れた。捏造妄想して私を納得させることが精一杯だ。お前は誰だ。なんでそんな頭いいんだよ。

目的と手段が倒錯した。覚えているだけでも「稠密」「切歯窄腕」「素馨」「奢侈」「蒼穹」「桎梏」「自家薬籠中」「駢儷体」これは教科書?ストーリーで覚える単語入門〜ドリルは別売り〜に見えてきた。これは小説ではない。情景を楽しむものでは無い。知らなかった単語を知るためにイイ感じのストーリーが付属しているのだ。もうだめだ。全部調べてたら、そうなる。私はこの小説で日本語達者になりたいんじゃない。小説を読む意義を歪めたくない。

これが一番の挫折理由かな。よくわからなかった。ストーリーで、「キリヒトは切ない顔をした。(意訳)」とあった。マツリカ様はキリヒトが殺人技術を村で磨いていたことが受け入れられず、動揺する。世界の書物を読み解く、世界の期待を一心に背負う偉大なる幼き魔女だろう?たかが有用な道具で、以前からの夢が叶うからお気に入りにしておいたとはいえ、なぜ殺人技術に動揺するんだ?夢が叶うことには一切関係ないだろう?むしろ頼もしいじゃないか。凄惨な事件などはキミめちゃくちゃ詳しいハズだろう?なんで?それに、すぐ和解した。思ってたものと、違う。なんか50ページほど2人で下水道探索してた。偉大なる魔女の畏敬の念を抱く驚異エピソードは無いんか。親しみやすさはもうmaxだよ。2巻読んだ。マツリカ様の頭脳戦、ほぼ無し。敵の弱みをキリヒトに可視化しただけ。青春はあった。

読み飛ばしまくって4巻まで読了するということは、読了ではない。自己満足を完成させたいだけだ。称号が欲しいだけだ。私は無理だった。マツリカ様とキリヒトが汗ばみながら時間を忘れて新しい手話を直伝するシーンはエロかった。ありがとうございます拝みました。

マツリカ様が我を忘れて詩の朗読を始めたシーンは可愛かった。喋りたかったんだね。良かったね。なんでマツリカ様いっつも口だけで冷笑するんだろう。キリヒトの正体を認められなかったから温室育ちなんだろうけど。ゆっくり笑わなくなっていったのかな。で、キリヒトにあって、言いたいこと言えるようになって、ちょっとニッコリを始めたのかな。妄想で事足りるや。私にとって謎にそこまで読み進めるだけの魅力は無かった。

著者は言語学者らしい。至る所に言語学の洞察が見られた。参考書としてはかなり面白かったよ。以下は覚えている内容。
「書物は、世界だ。世界は、広大だ。どこから読み進めても結構。(意訳)」
「己の手で発見した新たなる啓蒙を見つけたら、書物を残そうとする。そんな物がひしめき合っているのだ。どこに置くか、が重要なのだ。1冊しかない本もある。どこに置くか、によって二度と出会えなくなる可能性がある。さて、どこに置こう?(意訳)」
「手話と音で話す言葉を同一にすることは魚を土で育てようとするものである。とても息苦しい。唖者は生き生きと、音での発話とは異なる独特の論理体系に沿って会話する。音での発話に翻訳するのに、折衷が必要である。そこが大変なのだ。(意訳)」
「普段発話に沿って会話している人は発話体系に従う。硬い。聾者は空間までも操って発話する。奥行と、生々しさを感じる。(意訳)」

言語学者で身につけた知識をこの小説に残して置きたかったのかな。そっちが気になって内容が入ってこなかったよ。

〜ググッた晦渋単語〜
稠密(ちゅうみつ)=隙間の無いほどに、ぎっしりと詰まっていること。
素馨(そけい)=ジャスミン
奢侈(しゃし)=身の丈にあまるような、やや豪華なもの。
自家薬籠中=自分の意のままに操れるもの。
詩藻(しそう)=言葉のあや。修辞。
桎梏(しっこく)=手枷足枷。
蒼穹(そうきゅう)=教会の天井。
唖者=言葉が話せない人。
聾唖者=耳が聞こえない人。
浩瀚(こうかん)=書物が広部にわたること。
もっといっぱいあったような気がした。覚えているのはこのくらい。


知らない単語を知ることは面白いよね。ググること楽しかったよ。本分をみうしなってしまったけれど。
「図書館の魔女に出てきた難解単語集」という記事を見つけた。初めに読んでおけば挫折しなかったのかな。たられば。遅い。